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この恋、終わるか始まるか。

13話 一方で、彼は

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13話 一方で、彼は




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「いつもあんな感じなのか」

本日二人目が消えていく。
その後ろ姿を見送ると、まるで呼吸をするかの如く自然にそう零していた。

先程までのにぎやかさが嘘のように静まり返った室内に、悠一の低い声だけが響く。
視線の先には扉があった。和泉と──要が出て行った扉だ。何の変哲もない、学校等の公共施設によく使われる上部分にガラスがはめ込まれたもの。けれども、それを使用する人物によって随分と雰囲気が異なることを知った。

ドアノブに手をかけ、優しい口元に見事な微笑みを浮かべた銀髪の男のときは、扉も豊かな表情を見せていたように思えた。しかし次にそのノブに触れた男の際には、出て行こうとする背を押すように、妙に寒々しい色をしていたのだ。

そのあまりにも端緒な情景は、普段はロマンチストとは程遠い悠一ですらそう感じるほどで。
しかしそれも今に始まった疑問ではない。数週間前、相沢要ですと名乗られたときから感じていたことだ。

悠一が視線を向けるとさりげなくそらすのに、いつも注意深く見られているような気がしてならない。初めはただの人見知りだと思っていたのだが、どうも様子がおかしい。どう表現するべきか迷う、様々な色の混じり合った熱いような、冷たいような、目。

悪意や嫌悪が込められていないのは伝わるが、それゆえに謎は深まるばかり。直接尋ねようにも避けられているのが現状。よしんば訊けたとしても彼のことだから、さらりと躱されるのが関の山だろう。

その結果、察するに大学内でもっとも会話をしている智紀に本音を漏らしてしまった。

よくよく考えれば、二人きりで話すことすら初めての者に友人のことをべらべら喋るはずもないか、と反省しかけたところで智紀は口を開いた。

「あんな、とは?」

発された声は、やわらかく好意的だった。
ただ、しっかりと目を合わせて微笑まれた上に、訊き返され、悠一は言葉につまる。自分の気持ちは決して透かすことのない、探られている、ということだけが分かる。アンバランスな態度。しかし今は、彼の真意より要のことが気になった。

「飄々としているというか、つかみ所がない、というか」

よく分からないから尋ねているのだ。
口にしたものの、結果的には要に対する曖昧な印象を答えるしかなかった。すると、今度は唇の端を持ち上げ、笑みを漂わされた。前よりは感情がにじむが、全く意味の解らないそれを、悠一はただただ眺めるほかない。要といい、智紀といい、どうして腹が読めないのか。不思議でならない。

不思議と言えば今日休憩室に訪れていた和泉蓮という男もそうだった。

雛にも稀な銀色の髪と、湖畔を映した碧眼を持つ彼の顔立ちは、美しいと言っても過言ではないほど整っていた。けれど、だからといって過剰なくらいに褒め称えたり、下手に出てへりくだったりする必要はないと思う。
和泉も「気軽にしてくれ」と言ったし、それで満足そうにしていたから、そうしたまでだったが、会話中智紀にも要にも、まるで未確認生物に遭遇したかのような目で見られてしまった。

どちらかといえば、外国人なのに日本名を使っていることの方が気になった自分は、そんなに妙だっただろうか。

くだらないことを考えながら返答を待っていると、彼はふたたび「はは」と笑んでから言った。

「まあ、そうかもしれませんね」

はぐらかすような解答は言外に「違う」と言われた気がした。

(教えたくない、ということか)

それならば仕方がない。悠一はそれ以上つっこむことはせず「まあな」と、こちらもはぐらかすように言ってみせた。その芝居がかった所作に、智紀は目を細める。優しい表情だ。

「知りたいんですか」
「そう、だな」

どう答えるべきか迷ったが、肯定した。智紀は「へえ」と目を瞬かせた。

「だったら、声かけてやってくれませんか。あんな態度ですけど、受け答えくらいはすると思うんで」

彼も要の態度の異変には、いささか思うところがあったらしい。
無理だろうけどという感情だけははっきりと乗せてくるこの男を、悠一は好ましく感じる。同時に挑戦的な雰囲気も。

(自分は知っているが、といったところか)

「わかった」
「ありがとうございます。あの…いや本当に」

一瞬言いよどむ。それを見逃さず「どうした」と聞けば、彼は困った顔のまま愛想笑いを浮かべた。

「まあそのうち」
「そのうち?」
「話したい…ことがあるんですけど、まだ早いかなって。すみません、勝手で」
「いや構わない」

智紀の表情から深い気配を感じた。意地悪い意図はありそうにない。それならば、無理に聞き出す必要はないと思った。
何かあったら言えと付け足せば、智紀はほっとした顔で笑んだ。年下らしい可愛げのある笑顔だった。

「ありがとうございます。おれも待ってます」

悠一はするどい目つきをわずかにゆるめ、強く頷いて見せる。
そして思い出すのは一年前の記憶。

そう、悠一が”相沢要”という存在を知ったときのことだ。













*****

悠一さん、無口すぎてモノローグがめっちゃ多い。



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慈雨さまへ


慈雨さま、こんばんは!
前回は嬉しいコメントをありがとうございました(*´▽`*)


わー!そう言っていただけると嬉しいです!!

先輩視点に立つとやっぱりちょっとミステリアスですよね。
要のことを知っている慈雨さまと私でも「ふしぎなところあるなぁ…」と思っているのに、初対面の悠一さんはそりゃ「は??」ってなってるだろうなと(ノ∀`笑)

おたがい探り合いながら(笑)頑張っていってくれると思うので、ぜひぜひ見守ってあげてください(´ω`*)


お気遣いいただいてありがとうございます…!
慈雨さまの言葉通り、無理のない範囲でがんばりますね。

コメントありがとうございました。
またのお越しをお待ちしております~♡

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